公認会計士・税理士 根本 守 のブログ

私は、所属する協働公認会計士共同事務所において、日本の数多くの「非営利・協同」組織の経営や会計に関する支援業務を行ってきました。「非営利・協同」組織を今後も応援しさらに大きく広がってほしいと願う立場で、このブログにおいて「非営利・協同」の様々なことを述べたいと思います。なお、過去に事務所のホームページ等に掲載した文章も、現在でも有効と思われるものは(例えその後に法令等が改定されているものであっても)そのまま転載しています。(2019年8月)

日本における非営利・協同組織の法人形態      -中間的非営利法人-

 株式会社に代表される営利の法人形態と前回まで説明してきた非営利の法人形態との間にある中間的非営利法人について以下説明する。実際には少なくない中間的法人が、公益的非営利法人に準じた所有、分配、運営をルール化しあるいは実際に運用することで、非営利・協同組織として活動している。

 

(1) 一般法人

 一般法人法に基づき2006年からスタートした法人形態であり、社員を基礎とした社団(ただし出資は不要)と設立時の最低3百万円以上の寄付を基礎とした財団のいずれも認められる。株式会社等の営利法人と1、で述べた公益的法人の中間に位置する法人形態である。
 ただし、一般法人の内以下のような法人税法上の要件を待たすことで成立する非営利、共益型一般法人は、より非営利性を具備した法人形態となっており、法人税法上も収益事業課税である。(通常の一般法人は株式会社と同様の全部課税)
ー要件ー
(非営利型)
・剰余金の社員等への分配を行わない(定款で定める)
・解散時の残余財産は国、地方自治体、公益法人等に帰属させる(定款で定める)
・特定の役員の親族等が役員総数の1/3以下である
(共益型)
・会員相互の支援その他会員の共通利益を図る活動を主目的とする
 ・特定個人、団体への剰余金分配もしくは残余財産帰属を認めない
 ・特定の役員の親族等が役員総数の1/3以下である

 以下主に一般法人社団(非営利、共益型)を想定して説明する。

 

① 目的

 法的に定められた目的はなく任意に決定できるが、非営利、共益型の法人としては営利的な目的は掲げられない。

 

② 設立

 株式会社と同様に準則主義(一般法人法に基づく設立手続きを行うことで任意に設立でき、法人登記を行うことの他は行政への届け出等は不要)である。したがって、設立時の社員総会等開催後には比較的短期間に設立が可能である。

 

③ 法人運営

 定款、根拠法に基づき、以下のような運営が求められる。

・ 社団においては基本構成員としての社員(会員)総会、法人役員としての理事が最低必要である。ただし、民主的運営を図る立場からは、理事会及び監事(会)の設置が望まれよう。
・ 財団においては役員として理事、理事会、評議員評議員会、監事(会)の設置が求められている。
・ 非営利型の要件を満たすために、役員総数に占める特定役員の親族等の割合は1/3以内とする。

 

④ 対外的信用

 一般法人は株式会社のような営利法人ではないが、必ずしも非営利性、公益性を具備してはいない中間的法人である。ただし、非営利、共益型の要件をクリアーすることで、非営利の法人としてその活動に一定の信頼を得ることが可能である。
 

⑤ 行政からの補助金取得

 社会福祉法人のようにな制度化された施設補助、運営費補助の制度はないが、実施する事業に公益性が認められれ、地域住民からの支持が得られるようであれば、行政等からの予算措置に基づく補助金取得はありえよう。

 

⑥ 不動産取得や銀行借入

 法人名義で不動産取得をすることは可能である。また、当然ながら与信審査等はあるものの、銀行からの設備資金や運転資金の借入は可能である。

 

⑦ 会計と経理公開、税負担

・ 会計は、定められた基準はないが、一般法人中公益性が高い法人として認可される公益法人に対して定められた公益法人会計基準におおむね準拠していくこととなる。また、毎期の決算書を都道府県等に報告する必要はないが、法的には公告開示(官報等への掲載の他法人事務所内での掲示でもよい)することが求められている。 
・ 法人税の課税ルールは、一般法人(非営利型)の場合NPOと同じである。
・ 消費税の課税ルールについても、一般法人(非営利型)の場合NPOと同じである。

 

⑧ 受取寄付金の寄付者側の特典

 残念ながら特に特典はない。

 


(2) 法人格なき団体

 一般に町内会、PTA、マンション等の管理組合、ボランティア組織等法人格を取得してはいないが、団体として活動している事例は社会に多数存在する。この内、事業活動を行い、団体の運営規約を持ち、構成員が明確で代表者が存在するような団体について、「法人格なき団体」と呼んで、法的な一定の権利能力が認められ、団体としての一定の法的な義務が課される。
 非営利の事業活動を個人有志でスタートする場合やごく小規模の活動の場合には、法人格なき団体として活動することがありうる。ただし、事業活動を長期に継続したり、規模が拡大していった時には、何らかの法人形態を選択、取得していくことが課題となろう。法人格を持たない状態では各種の法的規制や社会的信用の面で障害が生ずることになるからである。

 

① 目的

 法的に定められた存在ではないことから、目的は任意に決定できる。

 

② 設立

 任意に設立でき、法人登記も不要である。

 

③ 法人運営

 任意であるが、民主的運営を図る立場からは、規約に基づき社員(会員)総会、理事会及び監事(会)の設置が望まれよう。

 

④ 対外的信用

 活動内容により評価はされるだろうが、どうしても法人格を取得している法人よりは落ちざるを得ない。
 

⑤ 行政からの補助金取得

 全く可能性がないわけではないが、補助金取得のためには行政側より何らかの法人格取得を求められる場合が多いであろう。

 

⑥ 不動産取得や銀行借入

 法人格を取得していないことから、団体名義での不動産取得はできず、団体で取得する場合にはその代表者名義とせざるをえない。したがって、代表者交代時等に名義変更等の手間とコストがかかる。団体の預金等についても同様であり、銀行借入を行う場合にもそれがネックとなりうる。

 

⑦ 会計と経理公開、税負担

・ 会計は、当然定められた基準はなく任意である。企業会計公益法人会計等を参考に、団体の実 情に合わせた会計が行われる。
・ 法人税の課税ルールは、NPOと同じである。
・ 消費税の課税ルールについても、NPOと同じである。

 

⑧ 受取寄付金の寄付者側の特典

 特に特典はない。

 

                                   以上